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『デルス・ウザーラ』

『デルス・ウザーラ』。1975年ソビエト映画。監督は黒澤明だ。前から観たいとは思ってた映画なんだけどねー。淀川さんが映画を紹介しているエッセー集みたいな本の中で、この映画を絶賛してたんだよなー。10年以上前にそれを読んで以来、いつかは観ようとは思ってたんだけどね。何か小難しくてタルい映画だったらどうしようという恐怖感がつきまとっててさー。

でも、いよいよ借りたよー。観たよ、観たよ、観たよ。うーん、やっぱ黒澤明天才かねー。おもしれーよー。デルス・ウザーラというシベリアの山々で暮らす山の民の生き方を描いた作品なんだけどさー。これが魅力的なんだー。山の中で寡黙に生きる老人。そこでいろいろな人や動物などに出会う。

とにかく不思議な人なんだよねー、デルス・ウザーラ。燃えてぱりぱりとひときわ大きな音を鳴らす薪に対して「うるさい!」と怒鳴ったり、山に来る他の人たちのことを常に気遣う姿勢、これがまた自然なんだよねー。道徳感みたいなんじゃなくて。アイデンティティの境界があいまいというか。

デルス・ウザーラって認識の仕方が根本的にオレとかとは違うんだろうねー。何か生命の捉え方がどうも違う。薪だろうが鹿だろうが自分だろうが他人だろうが、それらを区別する基準が異なるわけよ、オレとは。すべてのものを擬人化してるとか自然との共生とかいったレベルじゃなくて、うーん、うまく説明できないけど、とにかくそこらへんの境界が混沌としているんだよなー。興味深いよー。

かといって仙人みたいに達観してるわけじゃなくて、生きてるって感じのする人なんだよねー。最後の方は、恐怖感みたいなのに捕らわれてしまうし。ただ、自分の死に対する恐怖っていうよりは、それ以上の何かに対しておびえてるって感じはするんだけど。

インディアンとかアイヌとかいった人たちもこういった感じの生き方だったのかなー。そういえば、昔読んだ「アフリカの白い呪術師」の主人公も似た雰囲気の人だったね。白人なんだけどアフリカで占い師となった青年の物語なんだけどさ。神秘主義系かと思うと、デルス・ウザーラもそうだけど、全然論理的というか現実的に生きてて、魅力あるんだよ、ホント。

この「アフリカの白い呪術師」の作者って、ライアル・ワトソンっていうアフリカ出身の科学者。科学者とは言っても何が専門なのかよく知らないけど、いろいろな動物や自然の生態とかを研究しているうちに、もっと底にあるものを見たいと思って、突っ走ってるって感じの人だな。ちょっと怪しいとこあるけど。

この人の書いた「生命潮流」って本があって、この本を20才の頃読んで感動した覚えがあるよー。つい2年ぐらい前にも図書館で借りて再度読んだけど、やっぱおもしろい。何だか生命がわかった気になるんだよねー。わかったからどうしたって性質のものじゃないけど。

だけど、この本、深いって思うんだけど、時々論理が飛んでて、いきなり結論が出てきて、それも何となくそうに違いないって思わせるような説得力のある結論でね。どう考えても、この人、ドラッグか東洋過酷修行系の宗教やってるって感じするんだよな。きっと何らかの方法でトリップして結論だしたに違いないと思うよ。とにかくカッ飛んだ人だからねー。

まぁ、この「アフリカの白い呪術師」とかデルス・ウザーラとかいった人の世界に普通の人が第三者的に近づこうとすればするほど、そういったトリップ系の世界に足を踏み入れないと決して到達できないって気はするね。でも、マニアックでかなりエゴイスティックな世界に一度は突入する覚悟が要りそうだけど。

それにしても一体誰がこの映画企画化して黒澤明を監督にしたのかねー。こういった魅力ある人物を映画化した事自体が凄いと思うな。

※映画:「デルス・ウザーラ」(1975年 ソビエト)
(1998/05/06)