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| 2010年7月〜12月 更新状況と時々書く日記 |
前のプロジェクトが終わり、5月31日、6月1日と代休を取得した後、6月2日に新しいプロジェクトへ参加して以来、休日なしで連続32日勤務という異常な事態になっていたが、今日、ようやく休むことができた。仕事をやるならば、能力を使うか、体力を使うか、いずれかだろうが、オレは完全に体力を使って仕事をする派だ。時折、能力と体力の両方とも使いまくる、物凄くレベルが高い人たちに出会うこともあり、ビビらさせられるけど。
とにかく、こんな調子で朝から深夜まで同僚たちと一緒に働き続けているので、当然、皆、夜遅くなるとぐったりとしてくる。オレも椅子に座ったまま何となくぼーっと室内を見回していることも多くなる。仕事やる気がしねぇ…。おもむろにボールペンでノートや印刷資料の裏に落書きをしてみたり…。
奥さんや子どもたちに最近まったく会っていないと語る、すっかり髭が伸びた同僚の横顔。
この同僚とは2000年頃に同じプロジェクトで仕事をしたことがあったが、その時以来顔を合わす機会がなかったので、今回、10年ぶりの再会だ。
一方、こっちは夜中の1時過ぎに椅子に座り背もたれに倒れかかったまま寝落ちしている同僚。その横のテーブルで資料を作っていたのだが、思わず手を止めてノートに描いた。
この同僚とはここ数年間一緒に仕事をする機会が多いのだが、中学1年になる息子さんのことが心配だと語る。父親である自分は、中学生になると勉強することのおもしろさを知り夢中になったが、息子は何事に対してもあまりやる気を示さず、学校の勉強もあまりしないとのこと。そんな息子さんに対して説教をし、毎朝5時に起きて一緒に勉強しようと約束したと言う。そのため、どんなに仕事で遅くなっても朝の5時には家に到着できるように帰って行く父親だ。
そんな事情を知ったので、それだったらオレがこの絵を同封し、お父さんもこんなに家族のために頑張っているんだから君も勉強頑張れ、と一言寄せて、息子さん宛てに手紙を出してやるよ、と、同僚に提案したところ、同僚は「けっこうです…」ときっぱり断っていた。
会社からWebページを見ようとすると、その通信経路の途中にフィルタリングソフトウェアが動作していて、閲覧できるページが制限されている。アダルトサイトだの掲示板だのへのアクセスはできない。オレのページも普通の文章のページは見えるが、掲示板は見ることができない。だけれども、なぜかYouTubeは普通に閲覧することができたりして、何だか制限が厳しいのか緩いのかよく分からない状態ではある。
だから、夜中に一人で黙々と資料を作ったりしなければいけないときは、ヘッドホンをしてYouTubeに流れている音楽ビデオを流して聴きながら仕事をしたりしている。
最近、聴き込んでいるのは、企画物CDに参画した土屋アンナの曲、Dirty Beauty。
やっぱり土屋アンナは最高にしびれる。
それから、谷村奈南のevery-body。海辺で女の子たちが踊る姿に魅了されまくりだ。一緒に踊る男性ダンサーをオレ自身に置き換えて女の子たちと一緒に自分が海辺でダンスをしている映像を思い描いただけで昇天してしまう。
ちなみに夜中に仕事をしながら聴く音楽の選択は、いろいろな条件を満たす必要があり、なかなか難しいのだが、オレの長年の仕事人生で、いろいろな種類の音楽を聴いて試してみたところ、結局なんだかんだ言って、深夜残業中に聴くのに一番適した音楽は、若い女の子が、好きよ愛してる奥まで突いて〜♪などと楽しそうに歌いながら腰を振って乳を揺らしている曲である、という答えに辿り着いたのであった。
お客さん先での深夜作業の立ち会いを終えて、荷物を運搬するためタクシーに乗り込み、朝の6時過ぎに会社へ辿り着いた。荷物を置いた後、今から家に帰ると眠る時間がほとんどないと考えて、会社近くのホテルに泊まることにした。そのホテルから出勤すれば通勤時間は数分となり、その分、睡眠時間を確保できる。
そのホテルは限りなくビジネスホテルに近いのだが観光客や家族向けホテルとしても展開していて、料金は安いが室内の装飾は趣きがあって、なかなかいい。また半日ぐらいの短時間滞在サービスも行っているので、今朝のように少し眠りたい時には最適で、職場の同僚もよく利用している。そんな幅広い客層に対応しようとしている意欲的なホテルだ。
幸い部屋が空いていて予約できた。案内された部屋には広いベッドが置かれていたので、室内に入るとすぐにのびのびと寝転がり、そのまま眠ってしまった。数時間後、目を覚まし、シャワーを浴びて、歯を磨いたり髭を剃ろうとしたりして洗面所に行くと、簡易包装された歯ブラシや櫛が二組ずつ置いてあった。そうか、ベッドも広かったし、この部屋は二人用の部屋なんだな…と納得したが、歯ブラシや櫛やコップだけではなく、ひげ剃りまで二組用意されているのに気付き、どんだけ幅広い客層を狙ってるんだよ…と妙に感動した。
同じプロジェクトに参加している入社3年目の女性と雑談をしている時に「最近はどんな音楽聴いてる?」と尋ねたところ、「ビヨンセ聴いてます」と答えた。昨年の夏、別のプロジェクトに一緒に参加して働く機会があった時、彼女は確か安室奈美恵を聴いていたはずだったのだが、この一年で何だかすっかり趣味が変わったのだなぁ…外見の雰囲気とかは去年と変わっていないように見えるけど内面的に何か変化があったのだろうか…などと少し驚かされる。これ以上、この話は突っ込まない方がいいなと判断して、音楽の話題は途中で打ち切ったのだが、その後、家に帰ってからビヨンセを調べてみたところ、オレが彼女からビヨンセと聞いて思い描いていたのは実はビヨンセではなく、ビョークだったことに気付いてしまった…。
ビヨンセの話をした同じプロジェクトに参加している入社3年目の女性と同期入社の女性とも音楽の話をした。彼女は「インディーズを聴きます」と語った。コケティッシュという言葉が似合う個性的な雰囲気を持つ女性らしい返事だ。オレはどんな話題でも無理くり共感して食い付くので、凛とした彼女の姿に一歩も動じず、「おぉぉぉ!インディーズかー!最高のバンドだよなぁ。インディーズは相当ヘビーローテしてるよー。オレはベースのヒデが好きだけど、君は?」と有無を言わさない雰囲気で迫ると、彼女は「…じゃ…私は…ボーカルのタツヤってことでいいです…」と、うんざりしたような表情を浮かべながら答えていた。
同じプロジェクトに参加している40代前半の同僚と若手の台頭について語り合った。
今のプロジェクトでも中心となっているのは入社7〜8年目の若手の連中で、彼らがぐいぐいとプロジェクトを引っ張っている。
まぁね…。
以前に撮影してハードディスクに取り込んだまま放ってあった写真のフォルダを何となく漁ってみた。当時、途中で載せるために加工するのが面倒になったり、もしくはこれは狙い過ぎだろー…などと思って捨てたり、こんな凡庸な写真載せられるかよ…と考えて諦めたりしたものだと思うが、時が経ってみると、変な気負いがなくなったり、また自分が変わったりして、まぁこれもありじゃないか…と思い直したり。これおもしろいじゃん!と自画自賛したりするから、けっこう楽しい。というわけで、過去の写真を引っ張り出して、Alternative Sceneを更新中。また写真を撮ったり絵を描いたりしたくなってきたー。
ちなみに、これは3年前に作ったもの。つぶれた空き缶を使って絵にしたんだけど、今となっては、何をしたかったのか、全然思い出せない。
去年の正月に購入したばかりのイヤホンの左耳側から音が聞こえなくなった。右側からしか音楽が流れてこない。そのせいで使っていて実に気色が悪い。考えられる原因は左耳側のイヤホンが壊れたか、もしくは、オレの左耳が聞こえなくなったか、のどちらかだが、イヤホンの右側を左耳にはめて音楽を流すと左耳で聴くことができるので、オレの左耳が病気になったのではなく、左耳側のイヤホンが壊れたのだ、という結論に達した。
それにしてもまだ購入して一年半しか経っていない。しかも、そんじょそこらの安物ではない。なんと、二、三千円もするイヤホンなのだ。素人さんには使いこなせない、絶対音感を持つ一流の音楽家のみが使うことのできるイヤホンなのだ。そんなイヤホンを左側が壊れたといって、はいそうですかと買い換えるわけにはいかない。絶対音感を持つ一流の音楽家は、たいがい不幸で、簡単に買い換えるお金など持っていないものだ。
というわけで、自分で修理することにした。イヤホンとケーブルの接合部をぐりぐりと押し込んだりすると、たまに音が聞こえる。どうやらケーブルとイヤホン部分の接触不良ではなかろうか。早速、ケーブルの根元部分をカッターで切り開いてみることにした。
根元部分のゴムみたいなものを取り除いたが、ゴムのカバーが取れただけで、まるで中が見えないことが分かった。これじゃだめだ…。イヤホンの耳側とは反対側に付いている銀色のカバーのようなものを外すしかなさそうだ。ヤスリの先の細い部分を使って、無理くりこじ開けてみよう…。
なんだ、これ…。結構簡単に取れたのだが、まだイヤホンとケーブルの接続部が全然見えてこない。というわけで、えいや!とケーブルを引っ張ったら、がびーん…ケーブルが抜けた…。ケーブルが切れたと思われ、非常に嫌な予感。
ケーブルとスピーカーが接続されている部分を見つけた!スピーカーには無惨に切れたケーブルの残りがくっついている。それを半田ごてを使って半田付けされた切れたケーブルを外し、再びイヤホンジャック側のケーブルを剥いて、スピーカーに付け直そうとしたが、部品が小さすぎて、全然上手く行かない。っていうか、熱された半田ごてが小さなスピーカーにぶつかりまくって半田が飛び散り、なんだか普通に壊れるんじゃないか?という状態になっていて、数分格闘して何とかケーブルをくっつけてみたが、やっぱりまるで音が聞こえてこない…。うーん、こんな細かすぎるものを修理するのはオレには無理かもしれない。結局、手元に残ったのは分解されて二度と元には戻らなさそうな左耳用イヤホン…。
別の部署で働く同僚から電話があった。
この同僚との会話で出てくる店といえば、夏と年末の年に二回、同僚数人で行ってソファに横並びになって普段仕事の時には見せない表情を全員が浮かべながら乳を揉んだり吸ったりしている新宿のおっぱいパブしかない。
まぁ性分だからね…。
ヘイ、ヘェィ、ヘェーィ…というわけで、「うぬぼれ刑事」かな。スタッフ、キャストはこれでつまらなかったらマズいだろうって感じだし、そして期待通りおもしろい!しかも中島美嘉が出てる!好きだーっ!ちなみに中島美嘉の中島は濁らず「なかしま」。友だちに旧姓が五十嵐って子が居るけど、彼女の苗字も濁らず「いからし」。気に入った女性の苗字だと細かいとこまで気にするんだけど、男が相手だと途端に気力がなくなって、同じプロジェクトに参加している職場の新人男性社員に対して「えっと…確か小林くんだったよね?」などと適当な名前で呼びかけて「いえ、違います…」と突っ込まれるというパターンがお約束になってしまっている。
この三連休はプロジェクトの山場であり、土曜日の16時から日曜の13時まで21時間勤務をし、その後帰ってから眠って、今日は11時から24時までの13時間勤務をしたため、連休は完全に仕事で潰れてしまった。とはいえ、一昨日、昨日は相当大変だったが、今日は余裕があったので、一緒に働いている一回り年下の同僚の横顔をノートに描いた。
ちなみに、一回り年下の同僚の絵を描くとき、同僚の自然な表情を描きたかったので、同僚が真剣にPCに向かっている隣にオレは黙って座り何も説明せずに同僚の横顔を見つめながら明らかに字を書いている動きとは違う動きでボールペンを動かしていたところ、同僚はじっと集中してPCの画面を見ていたのだが、それでもさすがにオレの挙動が視界に入ってきていたようで、顔の輪郭や目や鼻が描き上がってきた頃、何だか観察していた同僚の顔の筋肉がぴくぴくと微妙に動いてるな…どうしたんだろう…と少し心配しながら見ていると突然、同僚が、ぷぷぅっと吹き出し、オレの方を向いて、「しおさん、一体何やってるんですか!?」などと笑いをこらえながら文句を言っていた。
日常生活に余裕ができたこともあり、そろそろ、ここ数年間で数多くのやり散らかして物凄く途中というかほとんど最初の段階で放り出したものを何とか少しでも進めていかなければ、と考え、今週は、夜家に帰ってから、英語の勉強を兼ねて「不思議の国のアリス」を英文法参考書と英和辞書片手にちまちまと読み進めている。一日一段落ぐらいのペースなので、ちっとも進まないのだけれども。それにしても、作者のギャグのセンスは素晴らしい。文章で書かれた光景がふとした時に頭の中に浮かんできて思い出し笑いをしてしまうこともある。
突然無性に部屋の大掃除をしたくなる傾向がある気がする。今年に入ってからは、ほとんど深夜に家へ帰ってただ寝るだけ、みたいな生活をしていたので、部屋の散らかり具合が最大になっているのだが、今日も昼間にいくらでも時間があったにも関わらず、そういう気にはまったくならず、夜中の1時前という寝る直前になって、部屋の大掃除をしなければ!という衝動に駆られている。振り返ってみると大掃除はいつも真夜中に開始する気がして仕方ない。で、片付けているうちに眠くなってきて途中で放り出してしまい、結局片づかない。でもそんなことを繰り返していると半年に一度ぐらいは気力が妙に持続する時があり、一気に朝までかけて片付けをやり遂げ、きれいになった部屋を見渡して達成感に包まれ、心地よく朝から睡眠を取ってしまい、結局会社を休んでしまう、みたいな。ただ、今夜は何となくなんだけど、掃除をする気力が持続できない予感がしている。
十六茶のペットボトルにふと目をやると「DRINK ME」という文字が浮かび上がっていたので、これは頭髪がふさふさになるか、禿げがさらに進行するかのどちらかであろうと思い、十六茶を飲み干した後、頭頂部に手を置いて、どきどきしながら「Which way? Which way?」と独り言を言っていた。
休日にお客さんのところで作業をした帰り、車で来ていた若手の同僚が、他の同僚何人かと一緒に便利の良い駅まで送ってくれると言う。この暑さだし助かるなぁと思い、遠慮なく乗せてもらうことにした。皆で車に乗り込み、車が動き始めてしばらくした頃、運転をしている同僚が運転席脇からCDを取り出し、車内に音楽を響かせ始めた。まるで聴いたことのないヘビメタっぽい音楽だ。尋ねてみると、どうやらパチンコの台で使われている音楽だという。それでも、夏の日差しの下、皆で車に乗り込み音楽を鳴らしながら走行していると、もう完全に休暇気分だ。助手席に座っていたオレは、気分が高揚してきたので、流れてくる音楽のメロディに合わせて首を縦に振りながら鼻歌を歌っていたところ、運転席に座る同僚が「しおさん…初めて聴く知らない曲で、テキトーな鼻歌、歌うの止めてください…」と言っていた。
今年の正月に古本屋でまとめ買いした岩波文庫版「千一夜物語」全13巻をちまちまと読んでいる。このペースだと全巻読み終わるのに年内いっぱいかかりそうな予感。登場人物が詩を歌う場面が多いのだが、その詩が文語調だったりするので、慣れていなくて読みにくく、なかなか進まない。それでも、荒唐無稽な物語あり、本当にくだらない物語あり、で、なかなかおもしろい。特に印象に残っているのは、バグダードの床屋の話。バグダードの床屋の男が、自分がいかに慎み深く口数が少ないかを説明するために自分の六人の兄の不幸な話を物凄く過剰に延々と語るという、床屋の男の性格設定がおもしろい話なのだけれど、特に二番目の兄、エル・ハダールの話がくだらなくておもしろい。
エル・ハダールが街を歩いていると見知らぬ老婆に話しかけられる。頼みを聞いて欲しいとのこと。事情がよく分からないまま老婆についていくと豪華な御殿に案内され、中に通された。立派な御殿の中には、類のない美人の若い乙女が四人居て、乙女たちは絨毯の上に横たわったりしながら甘美な声で歌を歌っている。とまどいながらも乙女たちの中に入っていくと、四人の乙女たちに言い寄られ、酒を勧められ、何が何だか分からないまま、歓待される。そのうち一人の乙女から、全裸になって私を追いかけて欲しいと頼まれた。どうやら、立った陰茎の立派さや走る身軽さを見届け、私にふさわしい男と判断したら、その乙女がエル・ハダールに身を委せてくれる、ということらしい。老婆からそう説明を受けたエル・ハダールは迷わず全裸になると、その乙女も全裸になり笑い声をあげて逃げ始めた。エル・ハダールは陰茎を立てながら、全裸の乙女を追いかけるが、乙女も逃げ足が早く、歓声をあげながら御殿の中をどんどん駆けていく。廊下を走り抜けて追いかけ、角を曲がり、また廊下を走り抜けて追いかけ、ということを繰り返していたが、ある曲がり角まで来ると乙女の姿が忽然と消えてしまった。乙女の消えた所には扉があったので、この中に隠れたんだな、とエル・ハダールは考えて、扉を開けて、部屋の中に飛び込むと…その扉は外に出る扉で、エル・ハダールが飛び込んだ先は、多くの人が歩く街頭の真っ只中…。そんな中に全裸姿で陰茎を立てたエル・ハダールが突然現れたものだから、大騒ぎになり、取り押さえられて鞭打ちの刑を受けた、という床屋の兄エル・ハダールの愚かで不幸な話っていうか、実にくだらなくておもしろい話っていうか、エル・ハダールの出来事を決して他人事とは思えないところがあるという物語だ。
過酷なプロジェクトが終わって7月の最後の一週間はゆったりというかぐだぐだになり、会社に行ってもいろいろな人とくっちゃべってばかりで正直何もしないは、朝目が覚めるといきなりやる気が出なくて当日の朝に会社に電話をして代休を取得し一日中家で眠りこけたりしていたのだが、7月の最後の日に以前からほんの少しだけ提案に関わっていた大規模なプロジェクトの受注が決まり、8月に入ると早速そのプロジェクトにオレも放り込まれることになった。
このプロジェクトは立ち上がりを一気に加速して行う必要があるため、夏から秋にかけて過酷な労働が待ち受けていることは明かで、またかよ…と正直うんざりしていたのだが、そういう気分になっていたのは決してオレだけではなく、このプロジェクトの提案活動を中心になって進めてきた若手の同僚たち自身もまさか受注できるとは思ってもいなかった連中が多かったようで、あぁ…夏休みを取り損ねた…などとそこらかしこで悲鳴を上げていたりして、なかなかおもしろい光景が見られた。
8月2日の月曜からこのプロジェクト専用の執務室に詰める日々が始まったのだが、先週の水曜日の夜はこのプロジェクトとは別の会社の飲み会があり声がかかったので遅刻はしたが何とか駆けつけて参加した。7月から派遣で会社に来ている女の子が居て、その子の歓迎会だったので、これは行かねばなるまいっ!と思ったのだ。だいたい初対面の時にこの子はオレのギャグに付き合ってくれる子かどうか分かるが、やはり予感した通り、美形の顔つきではあるが前頭葉が小さい系の女の子で、話が盛り上がる。オレはぐいぐいビールと日本酒を飲み、職場の飲み会にも関わらず一人だけキャバクラに来ている状態になっていた。
10時半頃飲み会は解散になり、さて、オレは会社に戻って仕事をしなければ!と皆が駅に向かう中、一人でふらふらと会社へ戻る道を歩き始めたのだが、何だかすっかり出来上がっていて、歩くのも面倒くさい。足下もふらふらしている。皆にそういう姿は見せられないので、別れ際は何とか頑張って歩いていたのだが、皆の姿が消え一人になると、急に気力がなくなり、道の端っこに街路樹が植えられていて道沿いに段が作られているところに座り込んだ。人通りもそれなりにある場所なので、不審に思われてはいけないと最初は座ってちょっと休憩している振りをしていたのだが、だんだん物凄く眠くなってきて、とうとう我慢ができなくなり、ちょうど座っている段は15cmぐらいの幅があったので、その15cmの幅で伸びている段の上に身体を横たえてしまった。目の前にはまっ暗な夜空が広がっている。あぁまずいまずい、うっかりこのまま眠ってしまって鞄を盗まれたりしてはいけない…などと遠くなる意識の中で考えて、鞄の取っ手を片足の中に通し、これで大丈夫だと思った瞬間、意識が朦朧となった。
それにしても、完全に眠りこけてしまえばそれはそれで愛嬌があるって感じもするが、オレは根が警戒心が強いっていうか枕が変わると熟睡できない方で、時折意識が完全になくなったりもしたが、それでも、この道を歩いている人に対して、オレは全然怪しい者ではないし、ただ一時的に休憩しているだけでここで眠っているわけではないし、眠っている隙に鞄を盗もうなんて魂胆を持っても無駄だ、ということを示しておかなかればいけない!という妙な強迫観念に襲われ、道を向こうからこちらへやって来る足音や自転車が近づいてくる車輪の音が聞こえる度に、寝転がったまま必死に首だけを持ち上げて、かっと目を見開いてオレは眠っていないぞ!という姿を示そうとしていたのは覚えていて、後から考えてみると、帰宅しようと歩いてきてこの道を通りかかったら、道ばたで貧相な男が横たわっており、眠っているのかと思ったら、突然首だけ、がばっと持ち上げて、かっと目を見開き、目線を宙に漂わせている、といったおぞましい状態だったはずで、いやぁまいったまいったお恥ずかしい、っていうか、意識がようやくはっきりしてきて時計を見たら夜中の2時前で、自分では意識はしっかりしているつもりでも、けっこう眠りこけていたのかもしれない。
夜中の2時過ぎに意識がまともになってきてから立ち上がり、自分の服装を見てみるとワイシャツはズボンからはみ出し、土もいっぱい付いていて、かなり地べたで寝返りを打ったな…という状態だったため、さすがに会社に戻る気もなくなり、その夜はそのままタクシーをつかまえて家に帰った。
相変わらず空いた時間にこつこつと千一夜物語を読んでいる。千一夜物語は、シャハリヤール王に対して、シャハラザードという女性が毎夜語り続けた物語を書き起こしたものだ。シャハリヤール王は、ある時、妻が奴隷と浮気しているのを目撃し侮辱と嫉妬と怒りの感情に突き動かされて、妻と奴隷の首をはね、その日以来、毎夜毎夜、若い女性を部屋に呼び、床を同じくした後で、朝になるとその女性の首をはねて殺してしまうという行為を繰り返していた。そこへ大臣の娘であるシャハラザードという女性が王の愚行を止めるため、自ら王の元に行き、夜の相手をした後で、王にいろいろな種類の物語を語る。興をそそられた王は、シャラハザードを殺さず生かしておき、毎夜、彼女が話す物語を聞く。そんな命がけの状況下で語られる物語なのだが、話の内容は冒険譚から奇妙な話など色とりどりで、時折、思わず脱力して笑ってしまうものもある。歴史的な放屁もそんな話の一つ。
イエメンで暮らすアブール・ホセインが結婚式を終え、祝宴を終えた後、いよいよ新婦と夜を共にするため、付き添いの婦人達と共に新婦の部屋に向かう。部屋の中では新婦は寝床で横になって待っていた。アブール・ホセインはゆったりと長椅子に座り室内の様子を伺う。そして付き添いの婦人たちにお礼を言おうと立ち上がった瞬間、なんとアブール・ホセインは思わずぶっと大きな放屁を漏らしてしまったのだ。新婦や婦人たちは気付かない振りをしてくれたのだが、アブール・ホセインは必要以上に狼狽し、部屋を飛び出し、そのまま馬に乗り、すべてを捨てて家を飛び出し、インドに向かう船に乗って国を捨ててしまう。放屁一つでこの行動も凄く歴史的だと思うのだが、その後、見知らぬ国で偶然王様の元で働くことになり近衛兵の隊長になり十年間を過ごす。しかし、十年経った時、急に故郷が懐かしくなり、どうしても故郷の様子を知りたくなった。そのため、王様に休暇をもらい、修道僧に変装して誰にも気付かれないようにして、国に帰る。そこには自分の育った故郷が変わらずあった。郷愁の思いに心を震わせながら、懐かしい自分の家に行こうとこっそり歩いていく。皆がもうあの時の放屁のことを忘れてくれていればよいと願いながら。
すると道の途中で老婆と小さな女の子が道ばたにいた。女の子が老婆に語りかけていた。友だちに星占いをしてもらうので、私が何年生まれなのか教えて欲しいと老婆に請うていた。老婆は女の子に返事をする。
老婆の言葉を聞いたアブール・ホセインは絶望し、自分の家を見ることもなく、その場で引き返して再びインドに戻り、異郷で孤独に暮らしたという。何じゃ、そりゃ…。スケールが大きいのか小さいのかよく分からん話である。